「合同会社」とは?
合同会社は、新会社法において新たに認められた会社形態で「持分会社」の一形態です。海外ではこの合同会社形態のことを「LLC」と呼んでいます。
平成18年8月現在、新法施行後3ヶ月で設立された合同会社が1000社を超えたとの新聞報道がありました。
なお、「持分会社」と「株式会社」の違いは、「株式会社」が金銭などの「出資」を重視した会社であるのに対し「持分会社」は役員(社員)である「人」を重視した会社です。
合同会社は社員の全員が「有限責任社員」である特徴があります。
持分会社形態の簡単な紹介は次の図のとおりです。
会社の種類 役員 | (社員)の形態必要な人数 | 会社自体が払えなくなった場合の会社債権者への責任 |
合名会社 | 全員「無限責任社員」人数は1名以上 | 会社の負債については、社員全員が完済まで連帯して責任を負う。 |
合資会社 | 「無限責任社員」と「有限責任社員」が混在人数は無限責任社員、有限責任社員が各1名以上 | 会社の負債については、「無限責任社員」は完済まで全員が連帯して責任を負い、「有限責任社員」は各自が出資した範囲内で責任を負う。 |
合同会社 | 全員「有限責任社員」人数は1名以上 | 会社の負債については、社員各自が出資した範囲内で責任を負う。 |
以上のようにこの「合同会社」は重視する部分が違いますが、責任の所在がいわゆる「株式会社」と酷似しているため、その特徴を活かして、今後いわゆる「社内ベンチャー」、「複数社参加の技術研究会社」、「証券化ビジネスの信託受益権保有会社」などの利用が多いようです。
設立手順
合同会社の設立手順は以下の通りです。
1.定款作成
合同会社を設立するには、まず社員となろうとする人(会社を作りたい人)が「定款(ていかん)」を作成しなければなりません。
この定款には会社の商号(社名)や事業目的といった会社法で決められた各事項を列挙し、最後に社員となろうとする人または代理人が記名と実印による押印をします。電子署名による定款の場合には電子署名をかけます。
「紙」による定款と電子署名による定款の違いは、電子署名定款の場合は4万円の印紙税がかからないことです。
ところで、合同会社の設立には「株式会社」とは違い、公証役場においての「定款の認証」は必要ありません。また定款の記載事項もかなり簡便になっております。
(1)商号(社名)
会社の商号(社名)を決める際に注意しなければならないのが、
①会社を設立する予定の市区町村内(本店所在地)に、設立しようとする会社と同一の商号であり、かつ本店を置こうとしている住所と同一の住所に本店がある場合
②会社を設立する予定の市区町村内(本店所在地)に、設立しようとする会社と同一の商号であり、営業妨害を作出するおそれがある場合には、法律の規制上その市区町村内では、会社を設立することができません。
この場合、商号を別にするか、事業目的を見直すか、会社を設立する場所を別の市区町村にするかの選択が必要となります。
(2)会社の事業目的
会社の事業目的の内容については、今回の法改正により具体性などの文章表現が緩和されましたが、適法性などの観点から表現が認められない場合がありますので、注意してください。
また、金融機関との取引の際に、あまりにも抽象的な事業目的の表現ですと、用途不明を理由に融資を受けられないなどの不都合が生じる可能性がありますので、なるべく具体的に文章表現を決めていただいた方がよろしいかと思います。
(3)役員構成
合同会社は有限責任社員(出資した範囲内で会社債権者に対し、個人として弁済を負う義務がある役員)が1名以上必要とされています。従来の合名・合資会社では、社員はいわゆる「法人であってはならない」とされておりましたが、現在の会社法ではその制限がなくなりましたので、法人も社員になれるようになりました。この場合の社員となる法人において「職務執行者」を選任する(たとえば株式会社が社員となる場合には取締役会等において選任)必要があり、その「職務執行者」が合同会社に登記されることとなります。なお、任期の規定はありません。
(4)資本金の額
合同会社では出資金額の合計額が資本金となります。なお、役員(社員)となろうとする人は必ず「1円」以上の金銭または財産を出資しなければなりません。
2.会社資本金の払込手続
署名押印された定款はすぐに効力が生じるため、定款作成後、直ちに
①銀行や信用金庫などの金融機関において、会社資本金分の金銭を有限責任社員(代表者)個人名義の口座(会社設立用限定として新規口座を用意してください)に入金し、その入金の履歴がある通帳のコピーを用いる。
②会社の代表社員となるべきものが領収書を発行し、そのコピーを用いる。
以上のどちらかのコピーを綴った払込証明書を作成します。また、入金した金銭をどのように資本金などに計上するかの証明書も作成します。
なお、合同会社では株式会社と異なり、払込について金融機関の口座を必ずしも利用する必要はありません。
3.設立登記申請
上記の各手続終了後ただちに法務局において登記申請をおこないます。申請人は代表となる有限責任社員が「代表社員」として会社を代表して行います。なお、会社は法律上登記申請をした日に設立したことになります。
祝祭日と土曜日は法務局はお休みですので、大安吉日に設立したい等設立日に重きを置いている方は注意してください。
なお、上記のとおり今回の法改正により、有限責任社員を1名しか置かない会社の代表者の肩書は「代表社員」として登記されることとなりました。
4.事後手続
設立登記完了後、法務局から会社の戸籍謄本というべき「登記事項証明書」と「印鑑証明書」が発行できるようになります。会社名義の金融機関口座が開設したり、許認可を受ける場合は必ずといっていいほど登記事項証明書と印鑑証明書が必要になりますので、それらを発行し、手続完了となります。次に会社設立後必要となる諸契約等の手続となります。
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