1.定款作成
株式会社を設立するには、まず発起人(会社を作りたい人)が「定款(ていかん)」を作成しなければなりません。
この定款には会社の商号(社名)や事業目的といった会社法で決められた各事項を列挙し、最後に発起人が記名と実印による押印をするか電子署名をします。
(1)商号(社名)
会社の商号(社名)を決める際に注意しなければならないのが、
①会社を設立する予定の市区町村内(本店所在地)に、設立しようとする会社と同一の商号であり、かつ本店を置こうとしている住所と同一の住所に本店がある場合
②会社を設立する予定の市区町村内(本店所在地)に、設立しようとする会社と同一の商号であり、営業妨害を作出するおそれがある場合
には、法律の規制上その市区町村内では、会社を設立することができません。
この場合、商号を別にするか、事業目的を見直すか、会社を設立する場所を別の市区町村にするかの選択が必要となります。
(2)会社の事業目的
会社の事業目的の内容については、今回の法改正により具体性などの文章表現が緩和されましたが、適法性などの観点から表現が認められない場合がありますので、注意してください。
また、金融機関との取引の際に、あまりにも抽象的な事業目的の表現ですと、用途不明を理由に融資を受けられないなどの不都合が生じる可能性がありますので、なるべく具体的に文章表現を決めていただいた方がよろしいかと思います。
(3)役員構成
今回の法改正において一番影響が出る部分です。
従来の法律においては、株式会社は最低取締役が3名以上、監査役が1名以上必要で、また有限会社は最低取締役が1名必要とされていましたが、新法ではいわば従来の株式会社と有限会社をまとめて「株式会社」の形態としたため、様々な役員構成の形態が生じうるようになりました。
これから起業される方向けの役員形態は次のものが考えられます。
パターン1:株式を他人に譲渡するときに会社の承諾を得なければならない場合(非公開会社)
①取締役が最低1名以上 取締役会非設置 監査役・会計参与の設置は任意
②取締役が最低3名以上 取締役会設置 監査役か会計参与のいずれかを1名以上設置
パターン2:株式を他人に譲渡するときに制限がない場合(公開会社)
③取締役が最低3名以上 取締役会設置 監査役1名以上設置、会計参与の設置は任意
従来の法律での有限会社形態を採用する場合は①を、株式会社形態を採用する場合は②か③を選択するものと思われます。
ところで新法では、上記のいずれの形態を採用した場合でも、会社を代表する取締役は「代表取締役」として登記されることとなりました。従来は取締役が1名しか存しない有限会社の場合の代表者が「取締役」としてしか登記されなかったのですが、法改正により変更になりました。
また、役員の任期は「非公開会社」の場合は最長10年、「公開会社」の場合は取締役は2年・監査役は4年となりました。
(4)資本金の額
今回の法改正により、従来最低300万円または1000万円必要とされた会社の資本金は最低1円からでもよくなりました。これは従来「1円会社」や「確認会社」と呼ばれる株式・有限会社形態を一般的な形態としたためです。
2.定款認証
作成、押印または電子署名された定款は、公証人の認証を受けなければ、定款が法律上「効力が生じず」、結果会社設立手続に使用する「定款」として使用できません。
定款の認証を受けるには、次の2通りの方法があります。
①紙面での定款を3部以上作成して、発起人の実印と印鑑証明書持参のうえ本店所在地の都道府県内にある公証役場に行き、定款認証をおこなう。
②定款のデータをPDFファイルにして、発起人または代理人の電子署名を付してフロッピーディスクに格納し、本店所在地の都道府県内にある公証役場に行き、定款認証をおこなう。
また、電子署名を付した者が弁護士・司法書士・行政書士等の代理人である場合は、別途委任状に発起人の実印を押印し、印鑑証明書持参のうえ認証手続をおこなう。
なお、②の方法を採用する場合は、定款本体が「データ」となり、紙面に印字したものは「写し」となる解釈となるため、結果文書に課税される「印紙税」(4万円)が不要になるため、コスト削減につながります。弊事務所では基本的には②の方法を採用しております。
3.会社資本金の払込手続
定款認証を受けた後、次に銀行や信用金庫などの金融機関において、会社資本金分の金銭を「発起人(または発起人代表)」個人名義の口座(会社設立用限定として新規口座を用意してください)に入金し、その入金の履歴がある通帳のコピーを用いて払込証明書を作成します。また、入金した金銭をどのように資本金などに計上するかの証明書も作成します。
4.設立登記申請
上記の各手続終了後ただちに法務局において登記申請をおこないます。申請人は代表取締役が会社を代表して行います。なお、会社は法律上登記申請をした日に設立したことになります。
祝祭日と土曜日は法務局はお休みですので、大安吉日に設立したい等設立日に重きを置いている方は注意してください。
なお、上記のとおり今回の法改正により、取締役を1名しか置かない会社も代表者は「代表取締役」として登記されることとなりました。
5.事後手続
設立登記完了後、法務局から会社の戸籍謄本というべき「登記事項証明書」と「印鑑証明書」が発行できるようになります。会社名義の金融機関口座が開設したり、許認可を受ける場合は必ずといっていいほど登記事項証明書と印鑑証明書が必要になりますので、それらを発行し、手続完了となります。次に会社設立後必要となる諸契約等の手続となります。
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