不動産の購入、または相続の場合は、その所有権の登記後に所有権に関する登記済証(いわゆる権利証)または登記識別情報というもの(以下まとめて「権利証」とします)が法務局から交付されます。しかし権利証は法律上再発行できないこととされております。権利証は重要な財産を証明する書面ですので、権利証を何らかの理由で紛失してしまった場合、心配される方も少なくありません。その場合、不動産に関する自分の権利を保全する(例えば他人に権利証を悪用され自分の権利を侵害されることを防ぐ)ためにはどうしたらいいでしょうか。
一番簡単かつ確実な方法は、紛失した権利証に関する不動産を管轄する法務局に行き、法令に基づく「不正登記の防止申出」というものをすることです。これは他人が権利証を悪用する事件が多発しているため、この申し出を行った場合、申し出後3ヶ月以内にその不動産について何らかの登記申請がされた場合には、申し出をした本人に法務局から連絡が入ります。ただしこれだけでは完全に登記を止めることはできません。しかし詐欺などの刑事犯罪を含んでいることも少なくないため、法務局から連絡が入った時点で刑事告訴等を視野に入れて対策を講じることとなります。
また、権利証を盗難された場合は、最寄りの司法書士か司法書士会に相談することをお勧めします。権利証を使用する登記申請は司法書士が関与している場合が多く、権利証の盗難情報はすぐに司法書士に通知されてくるので、権利証の悪用直前に権利侵害を食い止めることができる可能性もあります。
さらに、平成20年3月より「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が施行され、さらに事業者団体である日本司法書士会連合会の指導により、司法書士は基本的には依頼を受けた全部の業務について依頼者等の本人確認を義務付けられました。その二次的な効果ですが、権利証悪用の機会は今後は減少するものと見込まれます。
なお、盗難権利証を悪用することを防止する目的で実体のない所有権の名義変更登記や担保設定登記をすることを勧める方が散見されますが、実体のない登記をすること自体犯罪行為となりますので絶対におやめください。
ところで、登記申請をするため、権利証が必要になった場合はどうでしょうか?
従来は権利証を紛失した場合の登記申請手続として、司法書士等が「保証書」という書類を作成して登記を申請する手続がありましたが、その制度は廃止されました。
これに代わるものとして、権利証を法務局に提出できない理由を登記申請書に記載して登記申請を行い、後日法務局から本人からの申請に間違いないかの確認を厳重に行う「事前通知制度」と司法書士や弁護士等の法律で定められた資格者代理人が法務局に代わって厳格に本人からの申請に間違いないかを確認する「本人確認制度」の制度に改められました。
不動産の売買取引をする場合は、現在は「本人確認制度」が一般的に用いられております。
ちなみに、従来の権利証は改正法律施行後、その不動産について初めて所有権の名義を変更する登記を申請するまでは引続き有効です。
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